おやすみのキスがないと眠れない。
それを、悪くないと思ってしまっている私もどうかしているのだろう。
ドキドキと落ち着かなくて、寝れない私は、どうしてこんな事になったのだろうと思い返していた。
***
始まりは、1ヶ月前。
「ごめん、陽葵!お母さん達、海外に出張行くことになっちゃって......」
「分かった。行ってらっしゃい」
両親が出張に行くことは、しょっちゅうだ。
月に何日かは出張で居ない。
そういう時はいつも、お留守番しているのだけれど......。
「違うの、いつもみたいに短期間じゃなくて......その、2年は行かなきゃ行けないらしいの」
に、2年......。
国内なら、ついて行くけれど、行先は海外。
英語ができない私は、行ったところで生きていけないだろう。
「それでね、ちょうど瀬戸内さん家も出張らしくて、陽葵ひとりじゃ心配だから、圭人くんに家に来てもらうことにしました!」
お父さんも、それなら安心だと横で頷いている。