クールな彼のベタ惚れ事情
「志穂の一生懸命な姿って、周りの人間の心を掴むんだよなぁ……すでにひとり、志穂に堕ちてるし」
「バカなこと言わないでよ。
そんな物好きはいな……」
いないと言おうとしたけれど、実際はいたため口を閉じる。
まさに目の前の男がその物好きだった。
「俺が物好き、か」
「……っ、ちょっとなにして」
久我が何食わぬ顔で、私の制服のリボンを解き始める。
明らかにおかしいその行動に慌ててストップをかけたけれど。
「なにって、決まってるだろ?
男がいるってにおわせるんだよ」
「待って、それはおかしい……!
それに早いから!」
まだ付き合って2ヶ月だというのに、制服を脱がせようとするのは早すぎる。
キスで精いっぱいの私は耐えられそうにない。
「じゃあ俺はどうすればいいんだよ」
「少しぐらい我慢してよ……」
「もう2ヶ月も我慢したんだけど」
気づけば後ろから抱きしめられる形へと変わり、身動きが取れなくなる。
これはもう逃げられそうになくて。
「大丈夫、嫌がることはしねぇから」
そんなの嫌じゃないに決まっている。
きっと久我はそれをわかっているのだ。
久我の家、密室でふたりきり。
私だけに見せるその甘い素顔に、今日も溺れていく一方だった。