クールな彼のベタ惚れ事情
「しかし首筋って、なんかキスマークみたい」
「な、なに言って……そんなわけないから!」
「だろうね。だって志穂は男に興味がなさそうだし。
向井の気持ちにも気づかないくらい鈍感だから……」
なんとかキスマークとバレずに済んだけれど、どうしてここで向井くんの名前が出てきたのかはわからない。
「向井が気の毒すぎる」
「さっきからなに言ってるの絢、早く行くよ」
「ほら、どうして向井の話をしているのかわかってない」
さらにため息までつかれてしまう。
もちろんその理由は、考えてもわからない。
「まったく、もう少し相手の気持ちを考えなさいよ志穂は」
「え、どうして今……?」
「あたしはこれ以上なにも言わないから!」
絢に聞き返したけれど、結局は答えてくれずにその話が終わってしまった。
よくわからないまま迎えた体育の授業。