クールな彼のベタ惚れ事情



「離れて……くれるなら」
「ん、じゃあ決まりだな」


そんな彼にめっぽう弱い私が断れるはずもなく。
一緒に教室へと行く羽目になる。

なんて、本当は嬉しいくせに。


「今日の体育、みんな久我を見てかっこいいって騒いでたよ」

「へぇ」

「サッカー部の向井くんといい勝負だったから。
久我ってなんでもできるんだね」


少しくらい苦手なモノがあればいいのに。
もしサッカーが下手くそなら、あんな風に騒がれるどころか幻滅されていたはずだ。

私はそれを望んで……って、なに悪いことを考えているんだろう。


「不服そうだな。
自慢の彼氏だって喜んでもいいところなのに」

「喜べるわけないよ。
みんな久我に惹かれていく一方だから嫌……だ」


自分の気持ちをほとんど言い終えたあとで、ハッと我に返った。

もちろんすでに遅くて。

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