クールな彼のベタ惚れ事情
提出物の点数を高くつける科目もいくつかあり、数学もその科目のひとつだ。
ここは無理やりでも提出させようと思い、気合いを入れたのも束の間。
「提出物ってノートとプリントだよな」
「え、あ……うん」
「仕方ねぇから俺が持っていってやるよ」
「ありがと……って、なにわけのわからないこと言ってるの?私は提出物を出せって……」
あぶない、騙されるところだった。
提出物を持っていく代わりに、自分は出さない作戦に出たつもりなのだろう。
もちろん私は騙されない、なんて思っていたけれど。
久我の手には自分のノートとプリントが準備されていた。
「これ、俺の分。
今日はまじめにやった」
「ほ、本当だ……!」
プリントにはちゃんと数式などで埋められており、まじめに解いていた様子。
それを見て“偉い”と思ってしまった私は、おそらく感覚が麻痺している。