クールな彼のベタ惚れ事情
「まあ、これは出して当たり前なんだからね!これからはみんなと同じタイミングで出しなさいよね」
やっているのなら、なおさら後ろの席から前の席に提出物をまわしているときに出せばいいものの。
わざわざ私が久我の席に行くのも手間である。
「んー、日南が褒めてくれるかなって思っただけ」
「なっ……!?」
ニヤリと意地悪な笑みを浮かべる久我に対して、私は焦ってしまう。
そんなことを今ここで言うのはズルい。
ただでさえ、めずらしく提出物を出している久我を見て周りは感心しているのだ。
「見た?今の久我くん……」
「あんな表情もするんだね」
ほら、さっそく女子たちが騒ぎ始めている。
正直、久我の不機嫌な姿以外を女子に見られるのは嫌だ。
なんて、私は重い女なのだろうか。