クールな彼のベタ惚れ事情
「だから日頃の恩返しで俺が持っていってやる」
「は……」
「貸せ」
なんという強引な男だ。
まだなにも言っていないというのに、久我は私が手に持つプリントたちを奪ってきて。
「貸せって……」
「向井、ノートはこれだよな?」
「う、うん……そうだよ」
「じゃあこれも準備室に持っていけばいいんだな」
なぜだろう。
あまりに突然の行動に、嫌な予感がする。
向井くんも戸惑っている様子で、結局久我がノートもプリントも手にしてしまう。
ここは素直に任せるべきなのか悩んでいると……。
「あっ、ついでに先生に言っといてやるよ。
日南さんがサボって俺に押し付けてきましたって」
「……なっ!?」
まるで悪魔のような笑い。
久我の狙いはこれだったのだ。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
「なに」
慌てて教室を出ようとする久我のシャツを掴む。
逃してたまるか。