クールな彼のベタ惚れ事情
「久我がみんなの前で笑うから……ぜったいに印象良くなった」
「俺、笑ったっけ?」
「えっ……本気で言ってる?」
「ああ。まったく記憶にねぇ。
ただ志穂がかわいかったなってことぐらい」
「……っ、じゃあ騒がれてたのも気づいてない?」
「別に、周りなんて意識してねぇよ。
俺が志穂しか見えてないってことだな」
なにそれ、どうしてそんなことさらっと言えるの。
悔しいけれど、喜ぶしかない。
これだと単純だって思われてしまう。
「失礼します……って、先生いないね。
勝手に入っていいのかな」
「持って来いって言われてんだし、いいだろ」
平静を装って数学の準備室に行けば、見事に先生がおらず。
久我の言葉を信じて中に入った。