その溺愛、重すぎます!〜甘い王子様の底なし愛〜
*
「あら、天音。
もう帰ってきたの?」
家の中に入った途端、全身の力が抜ける。
思わず玄関先で座り込んでしまった。
「って、天音!?
どうしたの、そんなに顔赤くして」
リビングから顔を覗かせたお母さんは、私を見るなりおどろいたように駆け寄ってきたけれど。
まだ胸がドキドキと鳴り止まない中で、私はお母さんの言葉にも反応できないでいた。
だって私は、どうしてか……橘くんにキス、されて……。
「……っ」
先ほどのことがまたすぐ頭に浮かび、かき消すようにして首をブンブンと横に振る。
「天音、本当に大丈夫?
とりあえず部屋の中に入りなさい」
「う、うん……」
お母さんに不審そうな目を向けられる中、ゆっくりと家に上がる。
「服も買ったのね。あっ、すごくかわいいワンピースじゃない。天音に似合うと思うわ」
「……っ、そうかな」
ワンピース姿は橘くんの前だけで着てほしいと言われたけれど、もしかして冗談じゃなかったのだろうか。
その言葉もキスも含めて、一体橘くんはなにを考えているのだろう。
どれだけ考えようが、答えなどひとつも思い浮かばなかった。