その溺愛、重すぎます!〜甘い王子様の底なし愛〜
前もって買っておくべきだったのかもしれない。
自分の計画性のなさに後悔していると、橘くんが微笑みながら口を開いた。
「大丈夫だよ、もう準備してあるから」
「えっ……」
なんと橘くんの手には、私たちが観る予定のチケットがあった。
お金なんてひとつも払っていないのに、用意してくれたのだ。
慌てて財布を取り出したけれど、橘くんに『お金はいらない』と言われてしまう。
そんなの、払わないといけないに決まっているというのに。
「あの、自分の分は自分で払っ……」
「むしろチケット代という安い値段で姫野さんのとなりに座れるんだよ?しかも上映中は見放題。こんなお得なこと、あっていいと思う?」
「や、安くないです……!」
チケット代は決して安くないというのに。
橘くんはニコニコと笑みを浮かべながらも受け取ることを拒否し続けられてしまう。