永遠、というものがあれば
イルミネーションに気をとられた私が



ふいに聞こえた足音に横を見た時、



胸が跳ね上がる、というのはこういうことを言うんだろう。



私から少し離れた場所に、帽子をかぶり、茶色のコートをきた長身の男の人が立っていた。



胸がドクンと波打ち続ける。



なに、この感じ…。



しかも、気になったのは



彼の、



涙。




帽子をかぶってサングラスをつけてるその表情は本当ははっきりわからない。



ちょうど間に木があって、きっと彼から死角になってるのをいいことに、私は彼から目が離せない。



こんなに悲しくて寂しい涙を流す男の人を私は見たことがなくて。



そこには声はなく、彼は静かに涙を流し続けてる



ドキドキを止めない私の胸の音が聞こえるくらい…。


その時ふいに彼がこちらを向きかけたから私はなぜか慌ててツリーの影に隠れたんだ。



胸の鼓動はおさまらない。


どうしちゃったの?私。



だけど、この感じ…。



私、知ってる?



胸においた左手をもっと強くにぎって見つめた。



顔をあげて、もう一度彼の方を見ると、



…彼はもういなかった。
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