永遠、というものがあれば
あの冬の日のことが鮮やかに蘇る。


白いシーツ。


暖かなぬくもり。


雪…。


……っ。



「陽菜、どした?」


心配そうに尋ねるカズくんの声。


それを遮るように、私は


「すみません。ここで降ります!」


と声をかけ、タクシーを停めてもらった。


「陽菜?」


突然のことに怪訝そうな顔をするカズくんからゆっくり繋がれた手を離した。


優しさに甘えてごめんなさい。


「ごめん、一人で行きたい所があるから」


けじめをちゃんとつけるため。


カズくんは少し私をじっと見つめてから、


「わかった。でも体は無理するなよ」


後で連絡する、といいかけたあと、やっぱり俺「お兄ちゃん」だな、と頭をかいてから、


「行ってこい」


と一言言って、下車した私を残し、そのままタクシーに乗って去って行った。
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