病気の時は


 おかゆに卵を入れて、塩味をつけて。
 うまくできたかな。さすがにおばあちゃんにはかなわないだろうけど。
「はるちゃん、おかゆでき……」
 はるちゃんは眠ってしまっていた。
 アイスは全部食べたらしく、空とスプーンがテーブルの上に乗っている。
 そっとおでこをさわると、まだ熱い。
 ちょっと寝かせてあげよう。
 後で起こして、薬を飲ませないと。

 そのまま、頭をなでてみる。
 はるちゃんは、気持ち良さそうにヘヘッっと笑った。
 起きてるのかと思ったら、違ったらしい。笑ったまま眠っている。
 時々見るはるちゃんの寝顔の中で、最上級の可愛さだ。
 どんな夢を見てるのかな。

 寝顔を見ていたら、私も眠たくなってきてしまった。
 今日は集中して仕事をしていたから、いつもよりも疲れたのかも。
 それとも、はるちゃんのそばにいるから、催眠電波受けちゃったかな。

 はるちゃんの近くにいると、私はすぐに眠くなる。くっついていると効果覿面だ。
 そんなの、はるちゃんが初めてだった。
 親も、友達も。他人が一緒にいると、なかなか眠れなかった。
 学生の時に付き合った人も。3年前に付き合っていた人も、同じ。眠れなかった。
 特に体調が悪い時は、1人じゃないと眠れない。

 でも、はるちゃんは違う。
 はるちゃんがいると、空気が気持ち良くて、すぐに眠くなる。
 熱がある時も、はるちゃんなら大丈夫だった。
 顔を見たら、つい引き止めてしまった。前の時は追い返してしまったけど、今回は帰ってほしくなかった。
 はるちゃんのそばは、心地いいと、知っていたから。
 はるちゃんなら、どんな時も一緒にいられるって、思ったから。

 はるちゃんの、寝息を聞きながら。
 私は襲ってくる睡魔に勝てずに、ベッドの枕元に座ったまま、眠ってしまった。



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