冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい
青い薔薇の微笑
『レウル=クロウィドは青い薔薇だ』
誰かが言い出した陛下の呼び名。
男女問わず見惚れるほどの端正な顔立ちに、香りたつような色気。ブロンドの髪と涼しげなターコイズブルーの瞳は二次元の人間とは思えないほどの麗しさで、青い薔薇と形容されるのもうなずけた。
しかし、その名の由来は性格にある。
微笑を浮かべた穏やかな口調とは裏腹に、冷酷非情で本心を明かさない彼は掴みどころがなく、決して自分のテリトリーに他人を踏み込ませない。
こびを売って無理に近寄ろうものなら、棘のような冷たい言葉と態度で突き刺され、二度と会話すら交わせなくなるそうだ。
私は今日、そんな男の仮初めの妻となる。
「彼女が次の妃候補か?」
アルソート国の王宮で、玉座に腰掛けた男性が頬杖をついた。
品定めすらしない冷めた視線の先にいるのは、色素の薄い銀の髪を肩甲骨まで伸ばし、ラズベリー色の瞳をした私だ。ぱっちりとした二重は母親譲りである。
「名前はランシュア=リガオ。辺境の町出身ですが、名家のご令嬢でございます」
ううん。令嬢というよりも、召使いの方がふさわしいわ。
側に控えていた白髪の大臣が読み上げた書簡の内容に心の中で付け足す。
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