冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい
商船には貿易の商品と多額の紙幣が詰め込まれていたようで、その全てが燃えてしまった隣国ではアルソートへの反感が高まっているとエルネス大臣は続けた。
自分に不利益しかないはずなのに自作自演をするなんて、一体なんの目的で?
「エルネス。すぐにサメノア国の国際裁判機関へ電報の準備を。アルソートの身の潔白を訴える」
「かしこまりました」
レウル様は迅速に対応し、夜会に同行していたドレイクさんを使者に飛ばした。
アルソートが商船を襲った決定的な証拠がないためなんとか主張は認められたようだが、翌日、書斎で報告を受ける中、サメノア国から帰ってきたドレイクさんは渋い顔だ。
「向こうの証人は、沈没した船から生還したという船長でした。ひたすら隣国の負った損失を訴えながら、“砲撃をしてきたのはアルソートの船だった”の一点張りで……貿易の担当者にしてはひどくなまりのある男でしたね」
“なまり”?
ある心当たりが頭をよぎり、低い可能性にかけながら尋ねる。
「ドレイクさん。その船長は、少しクセのある茶髪で、そばかすのある小太りの男性ではありませんでしたか?」
「あぁ、そうです。特徴はまさにそんな感じでした」