冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい


間違いない。夜会で声をかけてきた男だ。

クモ騒ぎの前に会話を交わした男だと説明すると、ドレイクさんは「なるほど」と顎に手を当てた。


「もしかしたら、はめられたかもしれないですね」

「はめられた?」

「隣国が夜会にお嬢さんを招待した目的は、初めからレウル陛下を怒らせるためだったんです。他国の要人の前で揉め事を起こせば、商船炎上がレウル陛下の差し金だという主張が通りやすくなります」

「たしかに、両国が不仲である印象はつけられるでしょうね」

「はい。おそらく、船長はハルトヴィッヒ王の息のかかった駒だったのでしょう。冷静沈着なレウル陛下を怒らせようにも、少しの揺さぶりではうまくかわされてしまう。ハルトヴィッヒ王はわかっていたのです。お嬢さんを標的にすれば、陛下の逆鱗に触れられると」


つまり、なまりのある男がストールにクモをつけた犯人で、全てはアルソートを陥れるための罠だったのか?

レウル様が私を庇うために怒るだろうと読まれたのは、“アルソートに忍び込んだ密偵の前で懇意であるところを見せたから”だと説明がつくが、ストールにクモをつけたのは謎だ。

そもそも、火傷の痕を隠していると知っていなければ、こんな罠を仕掛けられないだろう。背中は密偵に見られていないはずなのに。

私の情報を、隣国に流した人物がいるのか?

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