冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい
この一連の出来事は、誰もが畏怖していたレウル陛下の評判を国際的に下げるだけでなく、隣国内の反アルソート感情を高める力がある。
一体、隣国はなにを企んでいるの?
するとその時、勢いよく書斎の扉が開かれた。
その向こうに見えたのは、血相を変えたアスラン騎士団長だ。オレンジの瞳がキツくつり上がっている。
「陛下、まずいです。隣国が、商船の報復でアルソートに向けて進軍する宣言を出したと知らせが入りました」
進軍!?
血の気が引き、頭が真っ白になった。
たしかに向こうは貿易の船と商品を失い、船長以外の乗組員も犠牲になった。
だが、報復だなんて、そんな強引な話があるのか?
国際裁判機関での訴えが通らなかったせいで、暴挙に出たのかもしれない。
アスランは険しい顔のまま続ける。
「隣国は、革命以前に事実上の支配下にあった鉱山地域の占領と、レウル陛下の退位を目論んでいるようです。王都に攻め込まれる前に手を打たなければ、アルソートは火の海になります」