冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい
隣国との関係が悪化した原因には、少なからず私に責任がある。非力だとしても、ひとり守られた場所で武運を祈るだけなんてできなかった。
「私も、命をかけて戦う皆さんの力になりたいのです。理不尽な侵攻からアルソートの未来を守るために」
レウル様は、凛々しい表情からわずかに頬を緩める。
すべて理解した顔だ。強く言って城に留めさせることも出来るのに、医師部隊の受け入れの意向や私の気持ちを尊重してくれるらしい。
「勝利の女神になってくれるか?」
大きく頷くと、レウル様は力強く続ける。
「ランシュアは医師部隊の馬車に同乗してくれ。この先は婚約者ではなく、ひとりの仲間として君に信頼を置こう」
その言葉は、なによりも嬉しかった。
進軍を始めたアルソートは、日の出とともに国境を越え、隣国との間にある草原を一望できる丘にテントを建てた。
テントは物資の保管や野戦病院としての機能が主で、隣国の兵の侵攻を食い止めるための拠点となる。
住民が避難した国境の町には、重傷者のための医療施設や物資の供給ラインだけが残されており、後方支援も抜かりない。