冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい
暴かれた仮面
「ランシュアさん、ランプで手元を照らしていただけますか」
「こちらに包帯の追加をお願いします」
傷を負った騎士団員が、仲間に担がれて帰還する。
開戦から三日目のあわただしくなったテントは、戦況の激化を示していた。
主に交戦は日中であり、夜間はそれぞれの陣営に戻って体制を整える流れらしい。夜空に星が出始めた頃、騎士達は治療を受けに帰ってくるのだ。
医師部隊の指示に従いながら、次々と運び込まれる患者の重症度を判断する。いまだ死者がひとりもでていないのが救いだった。
「ランシュア」
化膿止めの薬を補充していると、背後から名前を呼ばれる。淡いテントの光に照らされたのは、レウル様だ。
「薬を用意してくれているのか。ありがとう。みんなの容態はどうだ?」
「なんとか回復に向かっています。戦線復帰できる方も増えてきました」
「それは良かった。無理はしないように伝えてほしい。どうやら持久戦になりそうだからな」
顔を見れてほっとしたのも束の間。背後にいた若い騎士団員の存在に気づく。
「彼の手当てをしてくれないか。足に被弾したんだ。かすめただけで済んだけど、歩行に支障がある」