冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい
指先に宿る熱
「ランシュアさま。そろそろ面会時間が終わります」
手術を終えて二日。国境の町の宿に寝泊まりし、ずっと病室に通い詰めた。アスランとドレイクさんも護衛代わりに病院と宿を行き来してくれている。
看護師に声をかけられ、はっ!とすると、窓の外はすでに暗かった。
いまだに、レウル様は眠りについたまま。不安で胸が押しつぶされそうだが、泊まり込むわけにもいかない。
落ち着け、と心の中で自分に声をかけた。
命の危機は脱したはずだ。大丈夫。私が折れてはだめ。レウル様は今もずっと頑張っているんだから。
また明日、面会に来よう。
いつ意識が戻るかわからなくても、信じて待つんだ。
しかし、ベッドサイドから立ち上がり、繋いでいた指を解こうとした
その時だった。
まるで離れていく手を引き止めるように掴まれる。弱い力だが、たしかに指が絡まった。
目を見開いて視線を向けると、長いまつ毛がゆっくり持ち上がる。視線が合わず、ぼぅっと頭上を見つめる青い瞳は、まだ意識がはっきりしていないようだ。
これは、夢?
硬直した瞬間、わずかに首が動いて彼がこちらを見た。
言葉の代わりに、引き止める手に少しだけ力がこもる。
「レウル様?」
無意識に名前を呼ぶ。
すると、小さく呼吸をした彼は優しく微笑んだ。
「……ランシュア……」