冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい
私、ランシュアは由緒ある家柄に生まれたものの、身内での立場は悪かった。
両親は駆け落ちのような形で田舎に逃げ、質素な暮らしをしていたのだが、十三歳のときに住んでいた長屋が火事で全焼。
不幸にも炎の壁によって逃げ道が断たれてしまい、子どもをかばい続けた両親は娘を残して他界した。
そして、ただひとり生き残った私は父方の実家である屋敷に引き取られてきたのだが、駆け落ちをよく思っていなかった一族からの風当たりは強く、その先の生活はまさに地獄だ。
リガオ家は父が屋敷を捨てた後にその名がずいぶんと落ちてしまい、当主候補が女連れで逃げたとの噂が追い討ちをかけ貴族社会から軽蔑されるほどだった。
そのせいか「あんな疫病神の血を引いた娘なんて二度と関わりたくない」「自分がリガオ家の人間だなんて思うな」などと暴言を浴びせられるのは日常茶飯事。
そして一族は、両親の罪滅ぼしをするのはお前の役目だと言わんばかりに、没落した家を立て直す政略結婚の道具として城へ送り込んだのである。
「君、歳は?」
「今年、二十になりました」
「俺と五つ離れているんだな」
そう言って目を細めた男性は、噂に名高いレウル=クロウィド。五年前に先代の王である父が病死したため即位した若き王だ。
二十五歳ながら語学が堪能で外交力に長けており、自ら戦地に赴いて統率をとる手腕も見事だと聞く。