冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい
ホールへ足を踏み入れると、人々の視線が一斉に集まった。妃候補が追い出されているという噂が広まっていただけに注目されている。
うっ、そんなに見ないで……!
つい怯んでいると、隣から声が届く。
「ランシュア、腕を組んで」
「ここでですか?」
「説明するより見せた方が早いから」
言われるがまま、おずおずと腕にくっつくと、ゲスト達は一気にざわめきだした。まさにスクープを嗅ぎつけた記者のようだ。興味津々に近づいてくる者もいる。
「お久しぶりです陛下。本日は我が領をお招きくださりありがとうございます。……その、隣の女性はどなたですか?」
「あぁ、タナニエラ公。また顔が見れて嬉しいよ。彼女は城で共に過ごしている方だ」
「もしかして、ついにご結婚されるのですか?」
「はは。いや、今はまだ」
含みのある言い方がさらに誤解を生んでいく。
ゲスト達から矢継ぎ早に質問が飛ぶが、丁寧に対応している。なんだか、公務に向かう表情よりも穏やかに見える。純粋に国民との交流を楽しんでいるようだ。
「聞いてください陛下、以前の夜会でお話ししていたパン屋がついに開店しました」
「あぁ、地元の小麦を使うと言っていたアレか?名産になるといいな。視察に行ったら立ち寄らせてもらうよ」
「陛下、来月子どもがうまれる予定なんです。名付け親になってくださいませんか」
「お子さんが?それは素敵だ。おめでとう。責任重大だな。いくつか候補があったりするのか?」