冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい
優しい腕の中
「ランシュア様。陛下となにかありましたか?」
どこか聞き覚えのあるセリフ。ティータイムにコソコソと近寄ってきたのはエルネス大臣だ。
躊躇しながらも興味津々といった様子に戸惑う。
「なぜそんな質問を?」
「いえ。最近、陛下が城にお戻りになるのが早まった気がしましてな。以前なら予定の公務が終わっても、新たな仕事を入れたり視察先を増やしたりして夜まで働きづめでしたので」
さすが右腕として長く仕えているだけある。主の変化に敏感だ。
「たしかにお仕事はセーブされているようですが、それが私に関係しているとは限らないのでは?」
「いいえ。実はわたくし、陛下に直接お尋ねしたのです。“最近お帰りが早いようですが、気になる問題でもございますか?”と。すると陛下からこんな風にお答えされまして……」
『ランシュアが心配なんだ。あの子は目を離すとすぐに怪我をするからな。傷をつくっても黙っているし』
『なんと!それはいけませんね。では、ランシュア様のお付きのメイドを増やしましょうか?それとも城内の安全点検を強化して……』
『いい。そういう意味じゃない』
『はい?』
『ただ彼女に会いたくて帰ってきているんだ。言わせないでくれ』