だからきみを離してあげる
「あのさ、夏」
ふと、問いかけたけれど、返事はない。
夏は私の声なんて届いていないみたいに、中庭を見ていた。
そこには一年生の女の子がいた。
2階からでもわかるくらいお人形みたいに可愛くて、体もこのポッキーみたいに細い。
華奢な手首にピンク色のシュシュをしていて、握りしめているスマホカバーには、うさぎの耳がついている。
あからさまな上目遣い。高く響く猫なで声。可愛いもの身に付けている、可愛い自分。
こんなことを言ったら性格が悪いって思われそうだけど、私はああいうぶりっこな子と友達にはなれない。
そういえば、女が苦手とするタイプほど、男は好き要素がたくさんあるのだと、テレビで特集してた気がする。
男は単純だから、わかりやすい女の子がいいんだそうだ。
……ああ、そうか。
だから私ってよく男子から可愛げないって言われるんだ。
愛想もなく、ケタケタと笑うこともない私は、たぶん、わかりにくい女なのだと思う。