だからきみを離してあげる
私とは真逆にいる女の子から、夏は視線を外さない。
夏と彼女は、同じ図書委員に入っている。
夏は季節関係なく省エネで、ぼんやりとしてることも多いけれど、本のことになると熱く語り出すくらいの読書家だ。
活字が苦手な私でも読めるような本をいつも勧めてくれるけれど、私は一ページ目でギブアップ。それでも嫌な顔をしないで夏は新しい本を探してくれる。
それでもやっぱり、完読できたことは一度もなかった。
『わあ、その本知ってます!面白いですよね!』
『来月に新刊が出るよ』
『本当ですか?二年ぶりですよね!楽しみです』
いつしか私の代わりに、女の子が夏の話を聞くようになった。
図書室や廊下。おはよう、さようならの挨拶の延長で、ふたりが話してるところを何度も目撃した。
私には見せないような顔で、夏が笑っている。
息つく暇もなく、時間を惜しむように話している夏の姿を、初めて見た。
ねえ、いつからだっけ。
夏がどこにいても、なにをしてても、私といても、
あの子のことを探すようになったのは。