だからきみを離してあげる
「私と夏って、なんなんだろうね」
「え?」
その問いかけに、やっと夏は私のことを見た。
夏との出逢いは小学校の時。
今よりもっと女の子みたいな顔つきをしていて、泣き虫で、じれったくて、嫌いだった。
一方の私は当時からつねに強気で、スカートよりもズボンが多くて、リーダー格の男子に勝ってからはボスなんて呼ばれていたこともあった。
夏は弱いから、いつもみんなにからかわれていた。
べつに夏が泣こうとひとりになろうと関係なかったけれど、なんとなく素直に動いてくれる子分がほしくて選んだ。
『守ってあげるから、今日から私の後ろについてきて』
そう言うと、夏は本当についてきた。
カルガモの子供かってくらいに。
それから私たちは、友達でもない奇妙な関係になった。
中学生に上がる頃には、いつも一緒にいるから付き合ってると、周りに噂された。
とくに否定はしなかった。
それすら面倒だったと言ったほうが正しいかもしれない。
みんなからどんなふうに見られても、私と夏の間でこの関係が成立していれば、いいと思っていた。
そして、現在の高校二年生になっても、夏は私の隣にいる。