だからきみを離してあげる
「夏は私のことなんだと思ってる?」
「彼女じゃないの?」
「付き合おうって話になったことなんて、あったっけ?」
「なかったけど、そうだと思ってた」
周りが勝手に言ってたことだったけれど、一緒にいることが付き合っているという認識にされるのならば、それもありだとお互いに感じていた。
「でもさ、私たちって一緒にいるだけで、なにもしないよ」
彼氏彼女だったら、するであろうことを、なにひとつしていない。
いつの間にか夏の身長が私を追い越しても。
低い声で私の名前を呼ぶようになっても。
子分でもボスでもないふたりになっても。
今さらキスをしたり、抱き合ったりはできない。
そうしたいと、思った時には、
夏は私じゃない、他の女の子のことを見てた。