その男、イケメンエリートにつき冷酷そして甘党
健太郎は新宿の大通りから少し外れた路地にある喫茶店でコーヒーを飲んでいる。
朝一番に加賀谷に連絡を取り、待ち合わせにこの場所を指定された。
思いのほか落ち着いたレトロな雰囲気の喫茶店に、健太郎は加賀谷の人となりを分析する。
ロビンの言う通り、根っこはいい人なのかもしれない。
こういう店を交渉の場所に選ぶ人は真面目な人が多かった。
健太郎の頭の中のデータ分析では。
サイフォン式コーヒーの美味しさに浸っていると、店のドアの開く音がした。
昨日と同じスーツを着ている加賀谷を、健太郎は目を向けずとも気が付いた。
「遅くなってすみません」
健太郎より年上のはずなのに、加賀谷は敬語を使って挨拶をしてきた。
そういうちょっとした仕草も健太郎は見逃さない。
「いいえ、美味しいコーヒーをいただいてました」
加賀谷はアイスコーヒーを注文した。
お互い腹の中を探っている感じが妙に空気を重くする。
「加賀谷さん、申し訳ないですが、加賀谷さんの現状を僕なりに調べさせてもらいました」
健太郎は時間を無駄にするのが一番嫌いだ。
淡々と分かり易く話し始める。
「あなたはタキワ・カンパニーに多額の借金がある」
加賀谷は顔をしかめた。
どうしてそんな事を知ってるんだ?と威嚇の視線を向けて。