その男、イケメンエリートにつき冷酷そして甘党
健太郎は謙人の姿を見送ると、黙ったままロビンの手を取った。
手をしっかり握ったまま、地下の駐車場へ向かう。
ロビンはケンの何事にも動じない心をいつも身近に感じていた。
でも、今日のケンは、このビルの中で、人々が多く行き交う真ん中で、平然と手を繋ぐ。
人に見られる事なんてどうでもいいみたいなマイペースな性格に強さが加わって、ロビンは少し戸惑っていた。
「謙人さんと二人きりで、ご飯食べたの?」
地下の駐車場へ向かうエレベーターには乗らず、ケンは非常階段を下り始めた。
人がいない階段をゆっくりと下りながら、ケンはそう聞いてきた。
「ううん、違う。
コンシェルジュの湯村さんも一緒だった。
昨日、私を見かけてくれた人…」
ケンは何も言わずにロビンの顔を覗き込む。
ちょっと怒ったようにも見えるけど、でも、何だか微笑んでるようにも見えた。
「謙人さんと話してる時のロビン、すごくいい顔してた。
僕はあんまり見た事がないな。
ロビンのあんな顔」
ロビンは胸が苦しくなった。
ケンが苦しんでいるのは分かっている。
一言もケンに相談もせず、それに加賀谷君の事をケンに任せたままで、自分のこれからを勝手にソフィアに報告した事は、きっとケンを傷つけてしまった。
ロビンはもうどうしていいのか分からなかった。
加賀谷君やケンの事を考えると、前に進めなくなる。
特に、ケンに関しては、心と心が繋がって大きな絆が芽生えている。
愛する事を避けてきた自分が、初めて愛していると実感している。