その男、イケメンエリートにつき冷酷そして甘党
「ケン、私ね…」
ロビンがそう言いかけたと同時に、健太郎はロビンを自分の胸に引き寄せた。
薄暗い階段の踊り場はあまりにも静か過ぎて、自分の感情を隠し切れない。
胸の鼓動も息遣いも、悔しさに満ちた心の中も、全てロビンにばれてしまう。
でも、健太郎はそれでもロビンを抱きたかった。
ベトナムに帰る事を決心したロビンを許せない反面、その事を許せない自分が情けなくてどうしようもなかったから。
ロビンの温もりを手離すなんてできない。
謙人と一緒に居たところを見ただけであんなに動揺した自分が物語っている。
もう、僕はロビンなしじゃ生きていけない事を…
健太郎は大きく息を吐いてゆっくりと目を閉じ、そしてしっかりと目を開ける。
抱き寄せていたロビンを静かに解放した。
そして、踊り場の階段に疲れたように座り込んだ。
そんな健太郎を見て、ロビンも隣に座った。
蛍光灯の明かりがぼんやりと二人を照らす。
健太郎は自分の思うようにいかないロビンとの現状に頭を抱え込んだ。
自分の進むべき道が分からない。
加賀谷の事を整理して、オーナーの脇田を始末して、ロビンを解放する事が最善の策だと思っていたのに。