その男、イケメンエリートにつき冷酷そして甘党


「あの頃の私は、ママが全てだった。
ママの愛情だけで幸せだったし、満足してた。
もちろん、ママの前ではいい子でいたいし、ケンのご両親にも好かれたかったし、だからなのかな、ケンの前だけは本当の自分だったのかもしれない。
気を遣わなくてもよくて、ケンは何でも私の事を優しく包み込んでくれたし。

今なら分かるんだけど、私ってそんなにしっかりしてなくて。
ケンの前だけでは、素の私でいられたのかも。
あの頃から…」


健太郎は嬉しいような複雑な気分だった。
あの頃のロビンはいつも笑っていて、可愛くて、聡明で賢くて、健太郎の純粋な心をいつも鷲掴みにしていた。

でも、あの頃の健太郎は気付いていた。
ロビンのこの幸せと屈託のない笑顔は、きっと長くは続かない。
だからこそ、幼い健太郎は焦った。
早く大人になりたい… 大人になってロビンのその笑顔を守りたいと…

健太郎はロビンの方へ体を向ける。
ソフィアと何を話したのか知らないけれど、やっぱり僕はロビンを手離す気にはなれない。
そんな想いを込めて、健太郎はロビンの横顔をジッと見つめた。


「今日…
加賀谷と話してきた。
僕は彼と約束したんだ。
ロビンのために、君の事も救うって。
彼も、もちろんロビンも、その縛られた世界から解放してあげたい」


車の天井を見つめていたロビンが、ゆっくりと健太郎の方を見た。



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