その男、イケメンエリートにつき冷酷そして甘党


「じゃ、僕も一緒に行くよ。
僕だって、ロビンのママに会いたいし。
だから、日本から離れるなんて言わないで。
一か月くらい、一緒にベトナムに滞在しよう」


ロビンは何も言わない。
首も縦に振らない。
ただ黙って車の天井のどこかをジッと見ている。
その沈黙は、一人で行きたいというロビンの気持ちを物語っていた。

健太郎はロビンの手を握った。
そして、ロビン?と声をかける。
ロビンはただ泣いていた。
何が悲しいのか何が悔しいのか、苦しそうに泣いてる。

健太郎は静かにシートを上げて、車を走らせる。
ロビンの気持ちは痛いほど分かった。
でも、だからこそ、僕はロビンの側にいてあげたい。
だけど、そんな健太郎の思いとは裏腹に、きっと、ロビンはそれを望んでいない。
健太郎はハンドルを力強く握りしめる。
そして、前を向いたまま、ロビンにこう聞いてみた。


「ロビンはベトナムに帰りたいんだよね?
それも一人で…」


ロビンは隣でどんな顔をしているのだろう。
健太郎は横を向くのが怖かった。
ロビンの心はもう固まっている。
それは健太郎の心にも届いていたから。

健太郎はもうこの話は終わりにした。
今夜は何を言ってもロビンには伝わらない。
ソフィアと話した事がきっかけとなって、ロビンのママへの後悔だらけの開かずの扉が開いてしまった。
ママに会いたい、ママに謝りたい…
きっと、今のロビンの心の中は大好きなママの事でいっぱいなはずだから。


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