その男、イケメンエリートにつき冷酷そして甘党



もう亡くなってから十年以上は経っているのに、その空間はママの温もりに溢れていた。
ロビンは綺麗にメイキングされたベッドに座り込む。


「健太郎…
夢じゃないよね…?」


放心状態のロビンの隣に健太郎も座った。
そして、ロビンを力強く抱きしめる。


「夢じゃないよ…
夢だったら僕はここには居ないはずだから」


「何で?」


「だって、僕は生まれてこのかた、夢って見た事がないんだ。
熟睡するタイプだから」


ロビンはクスクスと笑う。
健太郎が熟睡している様子は誰よりも知っている。
本当に夢なんて見ていないみたいにぐっすり眠っている。


「どうする?
ママからのプレゼントは今度でもいいんだよ。
僕がいない時に、一人で開けてみても」


ロビンは首を横に振りながら、窓の下にある小さな木製の箪笥に目を向ける。
そして、静かに歩み寄った。


「ケンにも見てもらいたい。
だって、一人で見るのは何だか怖くて…」


ロビンの言葉に健太郎も窓際に歩み寄った。
そして、ロビンが大きく深呼吸をしてから引き出しを開けると、その中には、数枚の浅草の絵はがきと、青い和紙で作られたレターセット、そして、小さな透明のビニールに入ったロザリオのネックレスが入っていた。


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