その男、イケメンエリートにつき冷酷そして甘党
「ママ、ケンだよ。覚えてる?
ケンが、私をここに連れてきてくれたの。
自暴自棄になってママの事もベトナムの事も思い出せなくなっていた私を、ママがしてくれたみたいに大切に包み込むように愛してくれた。
ケンがいたから、私はママに会いに来れた…
ケンが諦めずに私の事を探してくれたから」
ロビンは胸が詰まって次の言葉が出てこない。
ママの前では涙は見せたくないと思っていても、涙は次から次へ滝のように溢れてしまう。
健太郎はそんなロビンの肩を引き寄せた。
そして、今度は健太郎がロビンのママに話しかける。
「ファムさん、お久しぶりです。
健太郎です、覚えてますか?」
健太郎の大きな声にロビンは泣きながら笑ってしまう。
いつもはそんなに大きな声を出す事なんてほとんどない人なのに。
それは健太郎の性格の良さを物語っていた。
ママだって、そんな事は知っている。
ケンの事が本当に大好きだったから。
「本当は、もっと早く…」
健太郎はそう言うと、こみあげてくるものに言葉を詰まらせてしまった。
ロビンが関わると、らしくない自分が顔を出す。
でも、今はその感情を素直に受けいれるしかない。