その男、イケメンエリートにつき冷酷そして甘党
アバンクールヒルズビルのエレベーターは、思いのほか混んでいた。
皆、レストラン街のフロアから一階を目指す人ばかりだ。
健太郎はエレベーターの中にいる間、ずっとロビンの手を握っていた。
最初は嫌がっていたロビンも、今では大人しく手を繋いだままじっとしている。
外へ出ても、健太郎はロビンの手を離さなかった。
ひんやりとした夜風が尚更二人をくっつけたがる。
「ケンのバカ…
嘘つき… もう嫌い…」
ロビンは隣を歩く健太郎に聞こえるようにそう言った。
ロビンはあの日、健太郎と偶然再会した事を何一つ疑っていなかった。
それなのに、そこにミアが絡んでいたなんてショックが大き過ぎる。
そして、ケンはミアの謙人さんへの想いを利用した。
そのくせ、偶然の再会を装って、ずっと嘘をついたままだった。
考えれば考えるだけ、悔しくて涙が溢れてくる。