想い出
第二章
 結月……

 これが本当の僕の名前なのか。

仮に僕の名前だとしたら誰が呼んだんだ。

家族か。友達か。それとももっと別の人物なのか。

それ以上の記憶は何一つあの日から出てこない。

そして、もう一つ。いつも隣にいる彼女の顔が見られなくなった。

何かが僕を抑えるように頭があがらない。僕は、いったい……

「おはよう。よく寝れた?最近あんまり眠れないみたいだけど」

「あ、うん。大丈夫だよ。それより大学は?」

 僕はうつむき加減で彼女に一言残すと、窓に近づいた。

「まだ、平気」

「そう」

 僕は朝食が用意された机を目の前に椅子に座った。

味覚も嗅覚も感覚も僕にはある。けれど、人には触れない。彼女以外には……だからこそ思う。

彼女と僕は一体何者なんだ。

仮に僕が死んでいるのだとしたら彼女はどうして僕がわかるのか。

その答えは謎のまま時が進んでいった。
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