パパにせんぶあげる。
その夜、懐かしい夢を見た。幼い頃、おばあちゃんと一緒に、空港まで仕事帰りのママを迎えに行った時の夢。
手続きを終えてゲートを出てきたママは、わたしの姿を見つけると、大きなキャリーケースを放り出してこっちに駆け寄ってきた。
「ママっ!」
わたしも走って、ママに思い切り抱きついた。
「会いたかったわ。花音!」
ママはわたしをぎゅっと捕まえて、すりすり頬ずりした。香水やお花の匂いとは違う、濃く甘い匂いがする。外国のにおいかな? ぎゅっと胸が熱くなるような不思議なにおい。ママのにおいだ…。
「花音おねえちゃん!起きて起きてー!」
「学校おくれちゃう!」
目を覚ますと、亜美ちゃんと亜夢ちゃんがわたしの身体を揺すっていた。
「ん…亜美ちゃん、亜夢ちゃんおはよう」
布団から顔を出し、ゴシゴシ目をこする。すると、7時30分を指したベッドサイドの目覚まし時計が目に飛び込んできた。
「えーっ!もうこんな時間? 」
「だって花音おねえちゃんぜんぜん起きないんだもん!」
わたしはベッドから飛び起き、クローゼットを開いて学校の制服を取り出した。大急ぎで着替えを終え、一階に駆け下りる。顔を洗って寝癖を整えていると、ピンポーン、とインターホンの音が家の中に鳴り響いた。
「花音おねえちゃん、冬樹くん来たよー!」
「きゃーっ、待って待って!あとちょっと待ってー!」
長い髪をポニーテールに結び、うすくリップを塗ると、わたしはパタパタと玄関の方へ走った。
「おねえちゃんっ、カバン忘れてるっ!」
「あっ、ありがとうっ!行ってきます!」
「いってらっしゃーいっ」
慌てて玄関を飛び出すと、家の門の前で冬樹くんが手を振っていた。
「おはよう。花音ちゃん」
「おはよう冬樹くんっ、お待たせ!」
わたしは冬樹くんの元へ駆け寄る。
「ごめんねっ、ちょっと寝坊しちゃって…」
「全然。でも花音ちゃんが寝坊なんて、珍しいね。夜更かしでもしてたの?」
冬樹くんの言葉に、わたしはパパの顔を思い出した。昨日、酔っ払ったパパがいきなりあんなことをしてきたから、昨夜はドキドキしてあまり眠れなかった。
「う、ううんっ。ただ、目覚ましが鳴らなかったの」
「ははっ、花音ちゃんってしっかり者に見えて、実はおっちょこちょいだよね」
「うう…」
学校への道のりを冬樹くんと走る。桜並木が風に揺れて、花びらを散らしていた。眩しい朝の光を受けた歩道は、落ちた花びらで薄ピンクにキラキラ光っている。
4月にサッカー部を引退したばかりの冬樹くんは、軽くジョギングでもするかのように、わたしの前を走っていった。わたしも必死に彼のあとを追い掛けた。
「花音ちゃん大丈夫?ほらっ、手」
「うっ、うん…」
はあはあと息を上げるわたしに、冬樹くんの手が差し出される。その手を掴むと、ぎゅっときつく握り返された。
こんなところを見られたら、また女の子たちににらまれてしまう。そう思いながら、門限ギリギリに冬樹くんと二人で学校の門をくぐった。
手続きを終えてゲートを出てきたママは、わたしの姿を見つけると、大きなキャリーケースを放り出してこっちに駆け寄ってきた。
「ママっ!」
わたしも走って、ママに思い切り抱きついた。
「会いたかったわ。花音!」
ママはわたしをぎゅっと捕まえて、すりすり頬ずりした。香水やお花の匂いとは違う、濃く甘い匂いがする。外国のにおいかな? ぎゅっと胸が熱くなるような不思議なにおい。ママのにおいだ…。
「花音おねえちゃん!起きて起きてー!」
「学校おくれちゃう!」
目を覚ますと、亜美ちゃんと亜夢ちゃんがわたしの身体を揺すっていた。
「ん…亜美ちゃん、亜夢ちゃんおはよう」
布団から顔を出し、ゴシゴシ目をこする。すると、7時30分を指したベッドサイドの目覚まし時計が目に飛び込んできた。
「えーっ!もうこんな時間? 」
「だって花音おねえちゃんぜんぜん起きないんだもん!」
わたしはベッドから飛び起き、クローゼットを開いて学校の制服を取り出した。大急ぎで着替えを終え、一階に駆け下りる。顔を洗って寝癖を整えていると、ピンポーン、とインターホンの音が家の中に鳴り響いた。
「花音おねえちゃん、冬樹くん来たよー!」
「きゃーっ、待って待って!あとちょっと待ってー!」
長い髪をポニーテールに結び、うすくリップを塗ると、わたしはパタパタと玄関の方へ走った。
「おねえちゃんっ、カバン忘れてるっ!」
「あっ、ありがとうっ!行ってきます!」
「いってらっしゃーいっ」
慌てて玄関を飛び出すと、家の門の前で冬樹くんが手を振っていた。
「おはよう。花音ちゃん」
「おはよう冬樹くんっ、お待たせ!」
わたしは冬樹くんの元へ駆け寄る。
「ごめんねっ、ちょっと寝坊しちゃって…」
「全然。でも花音ちゃんが寝坊なんて、珍しいね。夜更かしでもしてたの?」
冬樹くんの言葉に、わたしはパパの顔を思い出した。昨日、酔っ払ったパパがいきなりあんなことをしてきたから、昨夜はドキドキしてあまり眠れなかった。
「う、ううんっ。ただ、目覚ましが鳴らなかったの」
「ははっ、花音ちゃんってしっかり者に見えて、実はおっちょこちょいだよね」
「うう…」
学校への道のりを冬樹くんと走る。桜並木が風に揺れて、花びらを散らしていた。眩しい朝の光を受けた歩道は、落ちた花びらで薄ピンクにキラキラ光っている。
4月にサッカー部を引退したばかりの冬樹くんは、軽くジョギングでもするかのように、わたしの前を走っていった。わたしも必死に彼のあとを追い掛けた。
「花音ちゃん大丈夫?ほらっ、手」
「うっ、うん…」
はあはあと息を上げるわたしに、冬樹くんの手が差し出される。その手を掴むと、ぎゅっときつく握り返された。
こんなところを見られたら、また女の子たちににらまれてしまう。そう思いながら、門限ギリギリに冬樹くんと二人で学校の門をくぐった。