【完】白坂くんの溺愛は危ないことだらけ
駅に向かう前に、桜子さんのお宅へ寄らないと。
保存容器をお返しするためだ。
目と鼻の先、道路を一本渡ったところにある青い屋根が目印だ。
お母さんが言っていたように、今は外壁のペンキ塗りをしているらしく、外観から養生されているのがわかる。
「桜子さーーん!」
養生シートのせいでチャイムが鳴らせないから、私は外から叫んだ。
「小夏ちゃん? ごめんね気づかなくって」
何度目かで出てきてくれた桜子さんは、とても40代には見えない美しさだ。
ホントにお母さんのお喋り仲間か……。
「保存容器お返しに来ました! いつも美味しいおすそ分けをありがとうございます! 」
「わざわざいいのに~。ウチの子供達は好みがバラバラでねぇ、張り切って作っても食べてもらえることも少ないから、残ってしまうのよ」
「どれもこれも美味しくて、お弁当にも持っていってるんですよ!」
「嬉しいわあ。小夏ちゃんも育ち盛りの女の子になったのねぇ」
是非また食べてね、と桜子さんは優雅に微笑んだ。
私は再びお礼を伝えて最寄り駅を目指した。