【完】白坂くんの溺愛は危ないことだらけ
白坂くんはフッと澄ました顔を見せるだけで、何も言わない。
だから私もそれ以上詮索はしなかった。
白くて長い廊下を通る。
新築の家のような匂いがした。
手を洗う時に借りた洗面所を見た感じ、誰かまだ家族の人というか、他にも住んでそうな気配はしたけれど……。
リビングに移動したあと、電子レンジを借りて油淋鶏を少し温める。
「いい香りだね! いただきまーす!」
「すげぇ。めっちゃうまそう」
テーブルに並べた油淋鶏に白坂くんも目を輝かせる。
こういう顔を見ると、さっきまでの白坂くんや逃走劇が全部幻なんじゃないかって気がする。
……あんなのは悪い夢だ、今だけでも忘れよう。
「桜子さんのお料理はいつもすっごく美味しいんだよ! 和洋中、なんでも出来ちゃうの!」
「……へぇ」
「中学の頃からよくおすそ分けしてくれるようになったんだ!」
ふたりがけの白いソファーに腰掛けて、早速お箸をとる白坂くん。