【完】白坂くんの溺愛は危ないことだらけ
あくまでそれは噂だけど、と涼太が渋い顔をした。
それが噂どまりじゃないことは、私がよく知っている……。
「ま、まぁ……本気で、小夏相手に白坂が手ぇ出そうなんて思うわけがないけどなっ!」
「……なに、その言い方。ちょっと自分が告られたからってさ!」
あんまりだ。
私はこれでも腐れ縁の涼太のことをいざと言う時は頼りになる良い奴だと思っている。
中三の夏の夜、私が男達に襲われた出来事が、おぼろげに頭を過る。
その時、涼太は助けてくれたのに……。
また何度目になるかわからない絶交宣言をすることになるっていうの!?
出来れば、喧嘩なんてしたくないけど。
「はっ! だったら小夏も少しは女らしくしろよな! そんなんじゃ……本当にこの先、誰ももらってくんねーぞ?」
「───じゃあ俺がもらっていい?」
え……?
突然舞い込んできた愉しげなその声は、聞き慣れたものだった。
振り返ると同時、後ろからその声の主に、グイッと手首を掴まれた。
トンっと私の肩が背後へと傾いて、その胸に受け止められる。
見上げれば、艶のあるミルクティー色の髪が視界いっぱいに飛び込んできた。
「お前……っ、し……白坂凪!?」
えっ、なんで、白坂くんが……?