【完】白坂くんの溺愛は危ないことだらけ
涼太の名前を出すと、若宮さんは花咲くように表情が明るくなった。
だけど、次に出てきた言葉は、それとかけ離れていた。
「くるみね、ずっとイジメられてたの」
「え……?」
想像もしていなかった答えに衝撃を受ける。
イジメ……?
目が合った若宮さんは、えへへ、と肩をすくめた。
それは若宮さんの可愛さに対しての僻みとか妬みだろうかと思ったけれど、返ってきた言葉はさらに痛々しいものだった。
「くるみ……今よりすごく太ってて、制服は一番大きいサイズでも着れないくらいで、メガネもかけてました……えへへ」
二度目の自嘲の笑みに胸がヒリヒリした。
目の前にいる若宮さんは、誰が見ても可愛いことこの上ない。
だから、過去の若宮さんは想像もつかない。
信じられないと思ったけれど、語った若宮さんの色のない唇が小刻みに震えていた。
「だからね……同じ中学だった白坂凪が、くるみに気づいてないのも、無理はないの」
あっ、と声が出た。
頭の片隅で、だから白坂くんは覚えてなかったのかもしれないと思った。