【完】白坂くんの溺愛は危ないことだらけ
ごめんと繰り返すだけの涼太。
苦しいのなら、その苦しさを取り除いてあげたい。
だけど、涼太はそれ以上何も言わなかった。
「夏祭り……行きたいって言ってたよ、若宮さん。せめて、その気持ちにはちゃんと答えてあげて……」
諦めに似た気持ちで伝えると、私はするりと涼太の手を離した。
「夏祭り……?」
涼太が目を見張った。
何かを思い出したようにみるみる顔色が悪化する。
「毎年涼太と行ってた北区の──」
「……お前、行くなよ! ぜってぇ行くな!」
悲痛な叫び声をあげながら、私の肩を両手で掴んだ。
「……涼太?」
乱暴に、それを許さないとばかりに私の肩を揺さぶった。
涼太のこんな顔、前にも見たことがある。
必死に何かと戦ってる、涼太の苦しそうな怯えた顔。
あれは、いつだったか……。
思い出す、一年前の夏祭りの夜を。