【完】白坂くんの溺愛は危ないことだらけ
「そうか。それは助けてあげたいね? お前はとても勇敢な男の子だ。俺はそういう子が大好きだから、この先しっかり覚えておくよ」
ぼんやりとする意識の中で、頭上から愉しげな男の声が降ってくる。
「ほら、取り返してごらん? 勇敢なところを、もっと見せてよ?」
ひどく妖艶に笑った気がした。
男の手が私の浴衣をたくしあげる。
するりと侵入してきた手に、心臓が止まりそうになった。
私は身体をひねったり今ある力をこめて暴れたけど、男の力には歯が立たない。
「小夏ちゃん……っていうんだね?」
「───っ、」
太ももを撫で回すその手に吐き気を覚えた。
朦朧とする闇の中で、涼太が何度もごめんなさいと繰り返している。
「人様の服を汚しておいて、何を言ってるんだ? 俺はね、お前みたいなまっさらなガキを見ると腹が立つんだよ。 だからほら、早く誠意を見せておくれ。勇敢な少年くん」
私を捕えた男は嘲笑うように耳元でほくそ笑む。
涼太の瞳には絶望と絶対的な恐怖が見えた。
意識が途切れたのか、その時、私の視界から涼太の姿が消えた。