【完】白坂くんの溺愛は危ないことだらけ
* * *
今、目の前にいる涼太は、あの夜と同じ顔をしている。
私が涼太を見上げれば、不安に満ちた瞳が揺れていた。
「涼太、可愛い彼女と行くんでしょ? そんな顔しないでよ」
一年前の夏祭りの夜を思い出して、私は笑って言った。
ね?と、肩に乗せられた涼太の手を、優しく振り払う。
「若宮さんにとって、涼太の隣は特等席だよ。花火、一緒に見なよ」
「けど……」
「私は大丈夫だよ」
あの出来事を気にしているのなら、涼太が後ろめたい気持ちを抱えることなんかないんだよ。
「涼太が守ってくれたんじゃん……ね?」
「……ああ」
涼太に安心してほしくて私は笑顔を見せた。
だけど、涼太はいつまで傷ついた表情をしたままだった。