【完】白坂くんの溺愛は危ないことだらけ
「お前、相変わらずしつこいな。今さら何がしたいんだ?」
てっきり遠回りして逃げるかと覚悟していたのに、白坂くんは平然と声をかけている。
「あら? そんなこと、昔から知っていたんじゃなくって?」
窓の縁に肘をついた女の人が白坂くんを見上げる。
「なんの用だ。俺をさらうつもりか、ユリ」
ユリ……?
白坂くんが呼んだユリという名前を、どこかで聞いた覚えがある。
だけど、すぐに思い出せない。
「さらってもいいのよ? わたしは、あんたのことを、いつでもさらえるってわかってるでしょう?」
物騒な発言に足が震えそうになる。
さらって、剣崎のところに突き出すのかと考えたら恐ろしかった。
「何が言いたいんだよ、あんたは」
白坂くんは恐れる気配がまるでなかった。
真っ赤なルージュを輝かせた女の人がほくそ笑む。