【完】白坂くんの溺愛は危ないことだらけ
「呑気に可愛いその子と出歩いているところを、血眼になっている剣崎のことだから、目撃したって不思議じゃないわよね」
だとしたら、追ってこないはずがないじゃないの、とユリと呼ばれた女の人が薄く笑った。
「水瀬、家まで送る。少しだけ走れるか?」
私は無我夢中で首を縦に振った。
踵を返すと、後ろで女の人が「逃げても無駄なのに」と呟いた。
その言葉通り、私達は遅かったのだ。
「……やべ、水瀬こっち」
焦った白坂くんの声をかき消すほどのバイクの音が間近で聞こえた。
白坂くんの手を強く握り返した直後。
「みーつけた」
真後ろで男の声が聞こえる。
正面には黒塗りの車。
反対へ振り返ればあの男がいる。
挟まれたのだと思った。
けど、白坂くんは必死に私を連れて走り出そうとした。