【完】白坂くんの溺愛は危ないことだらけ


「ずっと会いたかったよ」


妖艶なその声に、白坂くんが足を止める。

白坂くん……?



「あはははは──ねぇ、凪。お前を追ってたら、すごくいいものを見つけちゃった」



背中に刺さる刃のように鋭い視線。


どこかで聞いたことがあるような声に、私はそんなはずがないと言い聞かせる。


だけど、本当はこの時既に予感はしていた。


飛びつくように見上げた白坂くんの瞳が、私にダメだと何かを警告している。


振り返ったらダメ、そんなことはわかっているつもりだった。



「剣崎がなぁんにも知らないとでも思っていたわけじゃないでしょうね?」



女の人が妖しく笑うと、後部座席の窓が完全に閉まった。


そこに映った自分の顔は絶望に満ちていた。



「──久しぶりだね、小夏ちゃん」


じっとりとした声で私の名前を口にしたのは、紛れもなく剣崎だった。

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