【完】白坂くんの溺愛は危ないことだらけ
【秘密】真夏の隠しごと
──夏祭りの夜。
時計を見ると、白坂くんが迎えに来てくれるまで、あと30分くらいだ。
私は、お母さんが和室にかけておいてくれたヒマワリ柄の浴衣を呆然と見つめていた。
「小夏、着替えなくていいの? 一緒に行く男の子が迎えに来てくれるんでしょう?」
「うん……お母さん、浴衣ありがとう」
お礼を言って浴衣を手に取った。
それでも不安は尽きない。
あの日、剣崎は一切手を出してこなかった。
「終焉を迎えるのは今日じゃないよ」と、意味深な言葉だけを残し、剣崎は静かに去った。
予想に反してあっさりと手を引いたのだ。
それが逆に不気味すぎてゾッとした。
おかしい……。
あの剣崎が、獲物を見逃すなんて。
白坂くんが家まで送り届けてくれたけど、それでも怖くて震えていた。
そんな私を、しばらくギュッと抱きしめてくれていた白坂くん。
まだ、その温もりが残っている。
夏祭りに行くのを止めようかと提案されたけど、私は絶対に嫌だと引かなかった。
だって、白坂くんと花火を見たいから。
子供っぽいわがままかもしれないけど、好きな人と一緒に花火を見れることって、奇跡みたいだなって思うから。