【完】白坂くんの溺愛は危ないことだらけ
「涼太くんじゃない男の子って、あの子?」
「え?」
背中の位置で浴衣の帯を結んでくれるお母さんが問いかけてきた。
あの子って、誰のことだろう?
うーん、と考えていたら、お母さんはクスクスとなんだか楽しそうに笑っていた。
「とぼけちゃって。小夏も涼太くんもよーく知ってるじゃないの。お母さんね、この前、久しぶりに見かけたのだけど、ずいぶんと背が伸びたわよね」
「……?」
ヒマワリの髪飾りをつけてもらった私は、小首を傾げた。
誰かと勘違いしてるんじゃないかな?
お母さんが知ってる私の仲の良い男子なんて、ずっと涼太ひとりだけだもん。
「じゃあ、いってきまーす!」
「はいはい。気をつけるのよ? あと、水分補給しっかりね」
熱中症になったことを心配しているんだ。
大丈夫だよと笑顔で頷き、下駄に足をつっかけて玄関を飛び出した。