【完】白坂くんの溺愛は危ないことだらけ
「白坂くん……どうして?」
そこでやっと、乾いた唇で声を震わせた。
私は何がなんだか全く理解が追いつかない。
「ほらほら凪。小夏ちゃんね、なぁんにも知らないんだって」
剣崎は、木に背中を預けて私を見やる。
「どうして凪が執拗に追われることになったのかも、そこで死にかけてる勇敢な少年が、そもそもの元凶ってこともなにひとつね?」
スマホを取り出した剣崎は、他人事のようにふんっと鼻を鳴らした。
「……剣崎、ちょっと黙っててくれねぇか? 」
冷淡な声で制されても、剣崎はヘラリと腹を抱えて笑っていた。
狂っていると思った。
けど、私だけが何も知らないのは本当だ。